会社は事業遂行するために社員を雇うことになりますが、事業主である経営者は労働関係の法令が定める基準を満たすことで、監督署対策は完了することになります。しかしかなりの企業規模でも全事由を満たすことは困難で、労務管理関係はビジネスで経営者の発想が「会社の常識は非常識」になる場合があります。この関係から労働者と経営者側と意見の相違点が発生した場合、事件として社内炎上に発展する場合があります。そこで事業主はトラブルが発生しないように目配り、気配り、心配りをすることが必要ですが、事業主に忖度をする社員との意見は、ともすると「会社の常識は非常識」になりやすく、これを防ぐには事業規模を問わず中立的な立場に立つ当所のような専門家の意見を求めることが必要です。
労働基準監督官は労働基準法で定められた試験に合格した国家権力を持つ司法警察官で、本来は労働者の保護を目的に、労働者を使用する事業所に対し関係法令の最低基準の順守を指導することが業務ですが、重大災害などでは現状保存のため現場への立ち入り事業活動停止命令を発することが出来ます。
監督官は通常労働基準監督署に駐在し、名称は「方面」といい、労基法・安衛法・最賃法・労契法などを中心とする監督指導で、技官は安全関係の申告受理や設備・機器の指導監督が中心です。
しかし、解雇や賃金未払いなどの雑事に追われ、今まで曖昧であった労働者に対する保護対策の通達や指導が罰則を背負って本法に引き上げられたことから、従来の監督官とは性格を異にし特別監督官による「カトク」なる部門も新設され、労働者の「命と健康」を守る立場で事業所へ令状なしでの立ち入り臨検となります。新法法施行後2~3年(コロナがおさまる?)くらいは指導期間と思われましたが、現状はこの期待に反し、詳細な事項まで是正を指摘し、この度の法改正で法律厳守のためには違反会社の代表や担当者(電通を参照)を裁判所に送検するという事件が頻繁に行われ始めました。また、裁判所も労働者保護へと変身しており従来の就業環境が大きく変化していることの再確認が必要です。
従来行政庁内では監督官の員数に制限があった関係で事業所に対する臨検は稀でしたが、法改正にあわせ2018年から監督官の内部事務を他の職員に補助させることで、従来の数倍の機動力で臨検が行われているようです。当然なこと増員計画も実行されております。先日ある事件の相談に監督署へ行くと顔見知りのハローワークの所員が監督職員席にいらっしゃいました。聞くと監督官試験に合格しての転勤だとのことでした。
顧問先の臨検事例を見ると担当監督官により多少は異なりますが、臨検は刑事警察官と異なり、令状を持たずに本省・都道府県労働局の方針と監督署独自の判断、労働者の申告(一番多いと言われる垂れ込み)に加え、過去の指導歴を基に予告なく事業所を訪問して法定帳簿である就業規則・各種届・労働時間管理記録・賃金台帳を始めとする法定帳簿類(5年保存義務で法令違反の証拠となる)の提出を求め、就業状況の聞き取りや現場調査を行います。
臨検は聴取した情報をもとにその場で口頭による違反事項の是正に加え、指摘事項をもとに後日是正勧告書を発行するので、事業所の代表者またはそれに代わる責任者が受領印を持って監督署に出頭するように命じられるのが一般的です。その折、是正勧告と指導票の2種が交付される場合があり、是正勧告は「労働基準法第**条***及び安全衛生法第**条***違反」として是正すべき事項につき、それぞれの是正期日が指定され、事業所はその是正結果を是正報告書に記載、また、機器などであれば是正事項を図面または写真、機器などの購入契約書等を添付し、是正事項実施記録の提出が求められます。指導書は調査時の口頭注意を文書にして指導されるものが多いようで、指導事項の報告の義務は多くの場合ありませんでした。
従来は残業時間が青天井であったことから、監督官もわりに穏やかな対応でしたが、働き方改革関連法では時間外労働に上限が設定された現在では、罰則を盾にかなり厳しく分単位で時間外労働の把握と、これに見合う残業手当が支払われているかについての監督が行われ、違反事項の関係条文を読み上げての改善命令となります。
SRBC鵜沢事務所では過去に監督を受けた優しい監督官が現在では豹変したと思考を変え、労働基準法以外からも多面的に支援指導を行っております。
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