この8文字の同一労働同一賃金とはどんなことをいうのか、大きく分けると正規労働者(均衡と均等についての説明は中小企業は2021年4月1日)と非正規労働者と派遣労働者問題に分けての説明になりますが、内容が複雑で行政も法律を作ったものの最終判断は司法任せで、更に最高裁の判例も多義にわたることからこのページで総ての説明は困難です。訴訟回避対策は多くの場合、客観性の雇用慣習と賃金体系で判断することになりますので、トラブル発生前に遠慮なくお問い合わせください。
①非正規労働者
金融機関の事例では金融機関のバブルがはじけ、その金融企業を救済するために、時の政府は金融機関で働く労働者を正規社員(主として女性)を金融機関の子会社の派遣社員という非正規社員に二分して企業の賃金負担の軽減を行った。その延長線上で派遣社員という非正規社員が誕生し、これが現在では働く人の4割が非正規になった状況の中で、非正規労働者の主張は同じ職場で同じ仕事をして同一の価値を生産しているのだから、同じ賃金なりその他の処遇も同一にすべきという発想で、正社員だから高い賃金をもらう、定年で嘱託になったから非正規のパートだ、という理由を基に差別化される処遇は、人間としての公平性を欠くとした主張から生まれたものです。例えば通勤交通費を正社員には免税額の実費上限まで支給するが、パートやバイトの非正規労働者には月額10,000円までの実費、また不支給、ということであると均衡と均等に反しますので、これは問題です。
60歳定年後の再雇用または継続雇用社員の給与が定年前と同じ仕事をしているのに、定年で嘱託になったからということだけで20%下げられたという事件については、平成30年6月1日の最高裁の判例では正社員とは職責が異なり世間相場がそうなっているのだから我慢しなさいというような判決になっております。しかし、属人的な手当の支払い方として通勤・食事等の手当については公平性を欠くとして手当名称の客観性が指摘され、一部手当については違反としています。また、上段と同日同種の判決がありますが、判決というのはその事件についてのみの判断で、定年後の再雇用、派遣、パート、有期契約、特定契約社員などでは事業主が決めた基本給や手当等の賃金が支払われている関係から、最低賃金のようにこれぞ同一労働同一賃金制度違反という基準はありません。厚生労働省の指導要綱によると不合理な待遇の禁止をパート法第8条で謳い、均衡待遇の確保を求め、相違する場合の説明責任を果たすよう求めております。
最高裁の判例は法律法文ではありませんが、類似する案件では最高裁の判例は法文と同じに扱うことが一般事例として扱われます。さらに令和2年10月29日の日経新聞に名古屋地裁で自動車教習所の定年後の判決で基本給は6割を切らない配慮が求められましたが、手当については触れておりませんので、トータルで従前賃金の何割になるかということですが、少子化による免許取得者の減少で自動車教習所の経営が厳しい状態を配慮した事業主救済判決のように思われました。そこで法律が求める不合理とはどの様なものか や、基準であるかについて行政は司法に判断を委ねていて、それぞれの地域の慣習・就業形態で労使が客観的に納得ができる水準以下を不合理としているように思われます。
また、派遣労働者について派遣元は派遣先の同種労働者と均等・均衡な待遇を講じる義務が求められたことから、同一労働同一賃金制度が実施される2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)以降の案件について裁判所がどの様な基準で判決を出すのか、行政も法律を作ったものの運用については司法に委ねる姿勢で、待遇とは一般的にいう地域の労働契約内容を指しているように思われます。
新聞報道によると公務員についても定年後の勤務延長については本給分を30%引き下げる案を軸に検討するとされ、段階的に行うとされております。
2020年4月1日からの改正労働法の施行に合わせ、正規社員と非正規社員との賃金や福利厚生、施設利用など格差理由が従来の馴れ合いの「会社の常識は非常識」にならないよう均等・均衡順守する客観的な説明ができる賃金体系に基づく手当等の定義とその支給が求められ、これに沿った就業規則の改定が必要となりました。
私見となりますが、どんな雇用形態であろうと「社員がいて会社」です。少子化で人材調達が困難な時代、会社が都合の良いように労働条件を決めるとトラブルに発展します。法律的にも定年が65歳になっている状況を踏まえ、労使相互が納得できる作業環境を作ることを多くの経験から学んで具体策の提案を行っております。お気軽にご相談下さい。
この格差問題についての注意点は、指針では非正規の待遇に合わせるために正規社員の待遇を引き下げ、これは禁止、正規と非正規の能力や経験が同じなら基本給や賞与も同じなどが提案されております。この問題については賃金格差に限らず、福利厚生、施設利用等について、今後相当数の訴訟が惹起されると思われ、手近なところでは費用が定額のADRや、労働問題を扱う労働審判が利用されると思われますが、審判は和解が原則であることからその内容が判決のように外部公表されませんので、その動向がどのようになるのか少し時間がかかると思われます。また会社とは関係のない一人で加入できる合同ユニオンもかなり強行な団体交渉の申し入れが想定されます。そのようなトラブルを発生させないために、会社は人がいて初めて会社として事業活動ができるもので、雇用形態に大きな格差があることは好ましいものではなく、人材確保に向け定年の延長または廃止、更に嘱託の定年を70歳にするなどという緩和制度の導入運用相談が寄せられている現況からみると、気力も体力もある生産的な人材は教育費のかからない貴重な人材として雇用を継続する指針を設けたいものです。
これらの問題の扱いについては、業種、事業規模、労働組合の有無、特に人材構成、地域性等多くのファクターを基に検討がされるものですが、結論的にはジョブ型に移行分類意外に対策は無いように思われます。しかしこれは技術的に管理が難しく具体的にご相談いただけると相談者の環境を考慮した多様な対応策が考えられます。